昆虫学者ファーブル雑記帳

フランスの昆虫学者ファーブルに関する話題を書いていきたいと思ってます。

2021-01-01から1年間の記事一覧

アヴィニョンの生徒たちードヴィヤリオ(続々々)

そもそも、ファーブルの知人のジュリアンが、なぜこのようなファーブルの書簡を 有名な雑誌に投稿したのかという疑問がある。前年がファーブル生誕百年だったこと もあって、ファーブルをより広く知ってもらおうとしたのかもしれないが、もっとも 大きなきっ…

アヴィニョンの生徒たちードヴィヤリオ(続々)

(ファーブル書簡:ドヴィヤリオ宛て四通目) 親愛なる友へ あなたは暇ですか?犯罪者は逮捕されてますか?どちらのケースかによって、私の 手紙を無視するか、読んで返信するかを決めて下さい。 ここに仕事のすべてを紹介します: 私の膜翅目の研究では、非…

アヴィニョンの生徒たちードヴィヤリオ(続)

前回ブログに続きファーブルからドヴィヤリオ宛ての書簡を紹介する。他にも書簡は あったはずだが、残っていないのか公開されておらず残念である。二通目以降の書簡 は一通目から三年ほど経過してしまっている。 (ファーブル書簡:ドヴィヤリオ宛て二通目)…

アヴィニョンの生徒たちードヴィヤリオ

昆虫記第一巻第1章スカラベ・サクレの冒頭は素晴らしい文章で、長い昆虫記の中 でも小生が好きな部分の一節である。 集英社版完訳ファーブル昆虫記第一巻上より以下に引用。 「ざっとこんな具合に話が進んでいった。私たちの人数は五人か六人、私がいちばん …

シスター・アドリエンヌ

部屋が散らかってしまい、床に置かれた本が邪魔で人ひとり歩くのがやっととなり、 不愉快も限界に達したので片づけに着手した。進化論にブログで言及したくらいから 平積みが悪化したようだ。全部の本を読めるわけでもないのに買ってしまい収拾が つかなくな…

コルシカ島ーレヌッチの消息

”コルシカ島のファーブルーレヌッチへの手紙” や ”コルシカ島ーレヌッチからの手紙” などレヌッチという人に関するブログを以前書いた。 レヌッチはファーブルのコルシカ島時代の教え子で、その後ファーブルと交流を続け 貝類収集の手伝いをしていた人である…

閑話(11)ー蛾のはなし

少し前、長い通勤の途中に何をするでもなく、ぼんやりと外を眺めていたが、急に 電車内で女性や高校生がキャーキャー言って騒いでいる声が聞こえてきた。 朝から何だろうと思っていると、どうやら大きめの茶色い蛾らしきものがバタバタと 不規則に飛び回って…

ファーブルの詩:数-神の理性(続)

巨大な蟻塚のごとき未知の世界、 そして新星輩出のすさまじい作業場、 溶解した核が宙吊りで浮遊させる 散りばめられた太陽の超自然的堆積、 未だ白熱する宇宙空間の物質を漂わせ 燃え盛る闘技場で一丸となり転げまわる。 彼らは、砂漠の砂塵と同様、渦を巻…

ファーブルの詩:数-神の理性

ファーブルは29歳の頃、コルシカのアジャクシオで「数」という非常に長い詩を書い ている。数学にのめりこみつつも、博物学とどちらかを選択しなければならなかった 時期である。しかしその詩の内容は、思いを才に任せ書き散らした印象も受けるので ファーブ…

ファーブルと数学

ファーブルは20歳台の頃、数学の魅力に取りつかれていたといっても言い過ぎでは ないかもしれない。一方で博物学にも強い興味を感じていたファーブルはどちらを 選択するべきか迷っていた。将来に向けていったい自分はどちらを専攻すれば良い のか、若いファ…

コルシカ島のファーブル:モキャン=タンドン(続々)

以前のブログでタンドンの写真を掲載したが、写真撮影のその日からちょうど一年 後の1863年4月15日に58歳の若さで逝去している。 ファーブルの師、植物学者のルキアンも63歳とファーブルに比べるとかなり若くして 逝去しており、二人の死因は何だろうとずっ…

コルシカ島のファーブル:モキャン=タンドン(続)

博物学者モキャン=タンドン (1804~1863) はファーブルの人生において重要な人物 の一人なのでもう少し述べておきたい。 そもそも日本語表記はモキャンなのかモカンなのか?集英社版はモカン=タンドンの 表記である。大正期叢文閣版はモカン、岩波の山田吉…

コルシカ島のファーブル:モキャン=タンドン

以前のブログで、ファーブルのルキアン宛ての書簡内容が、ファーブルにしてはやや 強引ではないかと書いた。本来はルキアンのように島全体を移動しながら植物や貝類 など採集するのが理想だが、教師をしながら決して金銭的にゆとりのあるわけでも ないファー…

コルシカ島のファーブル:レノゾ山

忙しさのせいにしてなかなか筆が進まない状態だ。小生の体力で日曜まで働き続け れば体調を崩すのは目に見えている。働けるというのは有難いが、いつ楽になるのか 分からないのでは気分が晴れることもない。 それでも先日、ファーブルの原稿が海外で出品され…

閑話(10)ー桃山さんの昆虫画

桃山さんの作品展が昨日までだったので、重い腰をあげ久しぶりに東京に出かけた。 休日でこんな時期だから電車もあまり混雑していないように思えた。日曜だというの に午前中に仕事が入っていて、終わってから都内に行くのも億劫だったが仕方ない、 今日を逃…

コルシカ島のファーブル:ルキアンへの書簡(続々)

コルシカ時代にファーブルからルキアンに宛てられた書簡は23通残っている。 ファーブルの動向を知るにはとても参考になるのでもう少し続ける。 「1850年10月13日、カルパントラからアヴィニョン宛て、17通目の書簡」 拝啓 カルパントラの数学教師エイセリッ…

コルシカ島のファーブル:ルキアンへの書簡(続)

引き続き、ファーブルのルキアン宛て書簡の中から内容を紹介していく。 すべての書簡を紹介出来れば一番良いのだが、特にファーブルの心情の表れている ものを抜粋した。残念ながらファーブルが受け取ったはずのルキアンからの書簡は残 っていないようだ。 …

コルシカ島のファーブル:ルキアンへの書簡

コルシカ島時代のファーブルの動向には非常に興味があるのだが、ルグロ博士の ファーブル伝を読んでもあまり詳細には書かれていない。学校や生徒たちのこと、 病気の事、もちろんコルシカの自然、貝類や植物の収集、そしてルキアンのことなど 若き日のファー…

エスプリ・ルキアンとは誰か

アヴィニョン生まれの植物学者エスプリ・ルキアン (Esprit Requien 1788~1851) という名前を知っている人は、ファーブルについての知識がかなりある方だと思う。 小生も昆虫記やファーブルの伝記など読むうちに、この変わった名前の人物を知った のだが、…

レモン売りの少年ファーブル

ファーブルの両親はなぜか故郷を離れカフェをあちこちで開業するのだが、なかなか うまくいかず、店を開いては閉め、閉めては開くということを繰り返す。 いったいどこにそんな資金があったというのだろうか?不思議である。 父アントワーヌの肖像は残ってい…

ファーブル昆虫記の旅ー安野光雅さん

画家の安野さんが旅立たれたというニュースを先月みた。昨年12月24日に逝去されて いたとのことで94歳だったそうだ。 30年以上前になるが、安野さんの「ファーブル昆虫記の旅」という番組があったが、 あの番組を見てファーブルに興味を持ったという方もたく…

科学 vs 宗教の渦

先日、「科学と宗教との闘争」岩波新書 昭和14年 ホワイト著 を読んでいたら、 フランスの教会と教育制度の闘いについて書かれていて目に留まった。 小生も以前ブログで触れたが、オルレアンの有名な司教デュパンルーが文部大臣の デュリュイを攻撃したこと…

ゴルトンと優生思想

進化論について考えさせられることが多くなっていたので、久しぶりにグールド博士 の本を何か読みたいと思い、"フラミンゴの微笑" という本を読んでいたのだが、 中にダーウィンの ”人間の由来” 1870年刊行のことが書かれていて目に留まった。 やはり博士の…

閑話(9)-惨敗記その他

昨年は新型肺炎に席巻され特別な年だった。今後、人類が生きていくかぎりこの厄災 のことは伝えられていくことになる。そして、今年もまたどうなっていくのか誰にも わからない。ワクチンが行きわたれば、今ほどの被害は減っていくだろうが安心は できない。…