桃山さんの作品展が昨日までだったので、重い腰をあげ久しぶりに東京に出かけた。
休日でこんな時期だから電車もあまり混雑していないように思えた。日曜だというの
に午前中に仕事が入っていて、終わってから都内に行くのも億劫だったが仕方ない、
今日を逃せばしばらく見ることができないのだから。
場所は文京区の古民家風の小さな場所だったが、味わいがあり作風によく合っている
ようだった。作品の方は今回も良かったが、残っていればお譲り頂こうと思っていた
画は他の熱心なファンがほとんど落手されていたので、気になっていたものを一作品
のみの入手となった。小生がうかがった時はお客さんは多く、帰る際にも外で女性が
一人待っていらっしゃった。作品集が発売され桃山さんと関係者の方々のご努力もあ
ってか一般的に名前も認知されてきているようだ。
個人的には昆虫を描いてくれる現代作家さんがあまり見当たらなかったので、前から
残念に感じていた。細密な画で有名だった熊田千佳慕さんは逝去されて、誰かいない
かなぁ…と常々思っていた。
桃山さんの作品はひと目見れば誰が描いたのかすぐわかるという点で、すでにオリジ
ナリティーを確立されている。具象だが抽象的でもある。よく宇宙を感じると称され
るが、単に細密な昆虫画という範疇には留まらないからだろう。
しかし、展開図という表現方法はイモムシだから成立するようだ、イモムシ以外の
昆虫でいろいろ考えてみたが、他に適用できそうな生物は思いつかない。
イモムシの独特な動き、豊かな紋様、表面の質感、柔らかさがあってこそである。
実物は苦手な人も多いだろうが、画なら緩和されるし、その小さな頭部や短い足は
かえって親しみやすさをおぼえる。そして、画の中のイモムシを見ているとその模様
の美しさに取り込まれていく。そこが精密だけの画で終わらない、こちらに生き物の
不思議さ、偉大さをあらためて気がつかせてくれるのだと思う。