日本人は手先が器用だという話はよく耳にすることだ。細かな作業を厭わずいい
仕事のものを作るからで、小生もそのように長く頭に刷り込まれてきた。
そして実際も正しいのであろうが…だからと言って「細かい仕事=外国人には無理」
などということにはもちろんならない。
当たり前のことなのだが、いつからか小生はそんな勘違いをするようになっていた。
「本当にそうなのか?」と気づいたきっかけは、はっきりしている。
18世紀後半頃の、ある無名のフランス人船員の小さな航海日誌を入手してからだ。
ギニアなど行った先々で見た蝶、蛾、イモムシ、ケムシなどを実に細密に日記と一緒
に記載しており、こんなに綺麗に描けるんだと素直に感銘を受けた。
手書きでないのでは?と専用の拡大鏡で見てみたが、枠の部分も全て描いてあった。
下書きの鉛筆痕も見える。
今思えば、この位の絵を描く人は他にもたくさんいると知っているが、その時は
まだ小生が細密な絵を見慣れてなかったために、印象深く感じたのだと思う。
え!?、 外人さんでもすごく上手じゃん…とその時はかなり驚いた。
絵の才能は国民性で決まるわけでない、どこに出没するかわからない持って生まれた
才能の一つなのだ。
当然のことに改めて気づいた小生は、ではファーブルやデュフールはどうだったか?
と調べ直してみた。部屋のあちこちをひっくり返し、やっと論文添付の図版を探し
出してじっくり眺めた。
感想としては図版は印刷ではあるものの、やはり彼らのスケッチを上手だと思った。
観察眼に優れた人達だし、当たり前だよなぁ…
ではファーブルとデュフールの図版はどちらが出来栄えが優れているのだろうか?
甲乙つけ難いが…贔屓目に見ると、どことなく気品があるのはファーブル先生の
図版であろうか。
左図はデュフールで1856年サソリの解剖図、
右図はファーブルで1855年ヤスデの生殖器の解剖図(動物学学位論文より)