アルマスを訪ねた日本人と言えば、表題の名著「ファーブル巡礼」をお書きになった
津田正夫先生に絶対に触れなくてはならない。昭和51年出版で古書でも入手可能だが
新潮社から奥本先生監修で再刊されている。
実際に現地に行かれていろんな情報を収集されているので、ファーブル好きには
欠かせない書籍の筆頭だと思う。小生は今でも時々参考にさせて頂いている。
前回ブログで述べた大橋先生よりも、より詳しくファーブルの足跡に迫っている。
巡礼というよりは調査・研究といって良い内容で、海外赴任歴が長かった先生の
腕の見せ所というべきか、情熱を持って調べられている。
例えば誕生日の調査では、ファーブルが洗礼を受けた記録から割出して書類の確認
を行なっている。古い記録が残っているというのも凄いが、それを探し出してもらう
よう説得する先生にも感嘆する。また、一回目の訪問でわからなかった点について
疑問解決のために50通以上の手紙を各所に送ったという。
やはり現地の方々がいろいろと動いてくれたのは、真に先生の熱意に依るところが
大きい。そしてファーブルについて詳しい人達が、まだご存命の時期に先生が訪問
されたというのは、我々ファーブル好きにとってもラッキーなことだった。
津田先生は明治30年生まれで京大卒業後、内務省社会局に入られ、その後ジュネーブ
国際労働機関に勤務されている。昭和33年にはアルゼンチン大使となっており、
この時にアルゼンチン生まれのナチュラリスト、ウイリアム・ハドソンに感銘を受け
研究をされた。そのような経緯からファーブルにも興味を覚えたということのようだ。
ファーブル好きには2種類あるという説?がある。つまり根っからの虫好きで
ファーブルにも関心を持っているという人、それからもう一方はどちらかというと
虫好きというよりファーブルの生涯の方に興味を持ったという方である。
津田先生はいわゆる虫屋ではないので後者に入る。小生も後者に近いのでファーブル
の足跡や資料に詳しい「ファーブル巡礼」には共感を覚えてしまう。
他に「私の南フランス案内」昭和53年、主婦の友社という著作ではファーブルのこと
だけでなく、ファーブルの友人で詩人のフレデリック・ミストラルの生家を訪問され
たこと等が書かれており興味深い。
1963年出版「ハドソンの足跡」、見返しに献呈サイン。
アルゼンチン大使の時の著作でスペイン語で書かれている。
津田先生らしくハドソンの筆跡や関連の写真も多く面白そうなのだが、
邦訳はされていないようで非常に残念だ。
ウイリアム・ヘンリー・ハドソンは英語で "William Henry Hudson"、
スペイン語では"Guillermo Enrique Hudson" となるらしい。