昆虫学者ファーブル雑記帳

フランスの昆虫学者ファーブルに関する話題を書いていきたいと思ってます。

キノコの水彩画ークロハリタケ属

ブログを書き始めて一年が過ぎた。

月に数回更新するだけなのだが簡単ではなく、頭の中はいつもファーブルに関する

話題について考えている。読んで下さる方のためでもあるが、自分の考え方が

まとまりやすいのでブログを書いている意味はあるようだ。

まだ書けてないものはたくさんあるが、実際に載せるとなると時間はかかる。

 

最近の話だと、やっとプロヴァンス語を読める方が見つかったのでファーブルの

詩の草稿をフランス語にしてもらおうと考えている。

ただ原稿はファーブルにしては珍しくなぐり書きに近いので解読は厳しいのだが、

詩集に掲載されていない内容もあるので何とか形にしておきたいと思っている。

その方によると、ファーブルは詩集では標準的なプロヴァンス語を使用しているが、

草稿の方は地方によって異なる言い方や単語を使用しており、より解読を難しく

しているとのことだった。

他には、ファーブルの戦争についての未刊原稿や交流の続いていた教え子への書簡

なども非常に興味深いのでいずれ掲載したいと考えている。

 

以下キノコの話題に戻るが、

ファーブルは昆虫記第10巻20章で「昆虫ときのこ」という文を書いている。

章の最後の方でよく茹でることが中毒事故から身を守る方法であると述べているが、

これは誤りで茹でようが塩漬けにしようが消えない毒はあるそうだ。

ファーブルは「ポールおじさんの話」の中でもきのこの話をしているが、

やはり塩を入れた水で煮ることをすすめている。(ファブル科学知識全集4

科学の不思議 アルス社参照)

これらは間違っている方法なのだが、昔から伝えられる毒キノコの見分け方や

毒消しの方法はほとんど根拠に乏しくあてにならないらしい。

色も目安にならないし動物が食べていても毒のあるものがある。

(キノコの教え 小川眞著 岩波新書参照)

 

キノコは古くは日本書紀に記載があり、平安時代の今昔物語には僧がキノコに

中(あた)って死んだという説話が掲載されている。

(日本人ときのこ ヤマケイ新書参照)

いつの時代もキノコには味や匂いなど人を惹きつける魅力もあるのだろう。

 

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所蔵している中から真筆と思われる水彩画を掲載。

Sistotrema confluens  和名なし 左上に1893年6月19日と鉛筆で記載。

はっきりはしないようだが、ファーブルが同定した名前は間違っており、

描いたものはPhellodon属(クロハリタケ属)の一種ではないかとされている。

(ジャン・アンリ・ファーブルのきのこ 同朋舎出版参照)

 

キノコが白っぽいので背景を暗くすることで上手く絵を浮かびがらせている。

Sistotrema confluens の水彩画は、パリ自然史博物館のサイトに二枚、上記の同朋舎

出版書籍に一枚、Jean-Henri Fabre Pilze に二枚掲載されているが、上記掲載と同じ

カットの絵は見当たらない。

 

クロハリタケ属は北アメリカ、ヨーロッパ、北アジアなどに分布する。

乾くとカレー粉に似た匂いがするそうだ。

傘が不定形に広がり、隣の傘と癒着して群生するという。

絶滅の恐れがあるようで、毒の有無はわからなかったが食には適さないらしい。

またファーブルが同定した名前 Sistotrema confluens について、現在は和名があり

ヒメハリタケモドキとなっていた。(世界きのこ大図鑑 東洋書林参照)

 

完訳 ファーブル昆虫記 第10巻 下

完訳 ファーブル昆虫記 第10巻 下

 

 

キノコの教え (岩波新書)

キノコの教え (岩波新書)

 

 

日本人ときのこ (ヤマケイ新書)

日本人ときのこ (ヤマケイ新書)

 

 

原色・原寸世界きのこ大図鑑

原色・原寸世界きのこ大図鑑