昆虫学者ファーブル雑記帳

フランスの昆虫学者ファーブルに関する話題を書いていきたいと思ってます。

ファーブルの見解ー学校教育の無償化について

一般向けの本などでファーブルがあるテーマについて書く場合、

対話形式で読者が理解しやすいように話を進めていくことが多い。

出版を予定していたと思われる原稿の中に教育に関わる内容のものが

あったので抄訳を掲載する。特にデュリュイの教育改革とも関連する

学校教育の無償化をテーマにしたもので、ファーブルの見解が

反映されていると考えられるので興味深い。

 

 f:id:casimirfabre:20180904211345j:plain

「学校教育の無償化」

ーあなたの意見に私もそう思います、とアンドレは言う。

もし先見の明のある法律が強制的に学校に行かせるようになれば、

その不幸な者は読まなければならない手紙を前にして絶望することが

ないのは明白です。

確かにもっと経ってから彼は健気に自分の欠点を修正しましたが、

多くの者たちは彼の様な固い決意を持たないし、その代わりに一生を

まるでガチョウ番の男の様に無学のままで終えてしまうのです。

 

またもう一つ質問ですが、おじいさん、とアンドレは聞く。

あなたの時代、子供たちは先生に月20スー(1スーは100円程度)の

授業料を払っていたと言っておられましたが?

今日では私たちは何も支払わないし教室の状態もより良く維持

されていますが、なぜこの様な優待措置が取られるのでしょうか?

 

ーあなたにそれを言いましょう。子供を学校に行かせなければならない

となった時点で何も障害になるものはありませんでした。

しかし自分のポケットマネーから授業料を支払うことは難しかった。

多くの者にとって不可能でさえありました。月に20スーのことでしたが

私の村で払える人はほとんどいなかったのです。

1日1スーが大事な財源であり、この1スーは人々にとって必要不可欠でした。

 

この1スーは病気の子供にとって1杯の牛乳になり得るし、母親が下着

繕うのに必要な糸のカセ(紡いだ糸を巻き取る道具)にも代えられます。

縫い針の備蓄とも言えるし、ランプの芯とも言えるし、他の日用品の

いずれにも例えられるのです。そしてこの出費の他に加えられるのが、

本、ノート、インク、羽根ペンなどの文房具代です。

これらを払わないといけないとすれば、貧乏人は学校から排除されて

しまいます。誰がその様な憎むべき不平等を望むというのでしょうか?

 

ー誓ってノンです、とアンドレは急いで答える。

しかしこれらの事を解決できる簡単な方法があります。

払える者たちは払い、払えない者には何も請求しない、というのでは?

 

ーあなたの考えた費用を割り振るというのはとてもシンプルです、と祖父は言う。

ただ、あなたの方法は深刻な不都合を招くことになるのを承知の上でしか

採用できません。それは授業料を払う者と無料で受けられる者という

2つのカテゴリーに生徒たちを分けることになり、同級生の間で軽蔑や嫉妬

という感情や突発的な傲慢さを招くことになるでしょう。