昆虫学者ファーブル雑記帳

フランスの昆虫学者ファーブルに関する話題を書いていきたいと思ってます。

ラッティ大司教の書簡ー(4)

                           1914年5月31日

 我が妹よ、今日はペンテコステの祭りですね。

精霊が使徒たちのもとへ降臨し、カトリック教会が世界に姿を現した記念日です。

それまでこのガリラヤ人たちは誇りを持ってはいませんでした。

無知で卑怯で、なんと野蛮なのか!

イエス・キリストが彼らに約束していた神の精霊は彼らをただちに把握したのです。

そして、彼らは神父として大いなる勇気をもって多くの群衆を前に語るのです。

そこではローマ帝国のあらゆる異教徒たちが代表として集まっていました。

なぜなら、彼らがエルサレムにやってきたのは、ユダヤ教ペンテコステの荘厳さ

を祝うためだったのです。しかし、前日には裏切り者であった漁師ペトロが発言

すると、すぐに三千人の人がカトリックに改宗したのです。

 この言葉は様々な言語で広がり、信者の数も同様に増えていったと聖なる書物は

語っています。文明化した世界の表面は変わっていったのです。

概念や感情の新たな秩序が導入されました。

そこから、人間の間に偉大な者、良き者、寛大な者が現れたのです。

 ドイツ人博物学者のボア=レーモンが数年前に言っていました。

「逆説的なように響くかもしれないが、現代科学はその起源はキリスト教

おかげなのだ。それは特に(キリスト教による)神の概念によって、

物事の唯一の道理というものに精神が馴染んでいるためだ。」

 私はある日、ソルボンヌの講義でこの考えを展開させたことがあります…。

しかし、これはあなたのために語るのではなく、ファーブル氏のために語っている

ようなものですね。あなた方お二人のためでも構いませんよね?

あなたと私の行為はペンテコステの日に由来しているのです。

あなたは自分の宗教的人生で、私は私の祭司職で。

 あなたがファーブル氏に対して娘のように献身的に介護し、

学者の魂が私にとってそれほどまでに大切になったのは、

「神の愛が、神の御霊そのものによって我らの心に広がった」ためでしょう。

 救世主の約束によれば、この御霊が苦しみの中にいる我らを照らし、

我らを駆り立て、さらに我らを支援くださるのです。

この御霊がカトリック教会を活気づけ、歴史と最も相反する浮沈の中で、

さまよい・堕落・崩壊を妨げてくれるのです。

あらゆる哲学が過ぎていきました。クレドは存在し、それが良識と美徳の崩壊から

人間を救うのです。

 私がファーブル氏に、学者の実り豊かな人生をキリスト教徒として終えて欲しい

と切望していることに、ファーブル氏は驚くかもしれません。

パスカルはこう言っていました。

「全ての肉体、全ての魂、それが生み出すもの全てをもってしても、慈悲の心の

ありがたさには遠く及ばない。それは無限に気高い秩序なのだ。」

慈悲とはここでは、イエス・キリストの恩寵や信仰の中にある魂によって触発される

神の愛にすぎません。我らの大切な病人の誠実でまっすぐな魂の中に、この慈悲の

心が確立して欲しいと思うのです。

ただ慎ましく神にそれを願います。崇高な魂が行うように慎ましく、

子として以上に、神の善良と慈悲に絶対的な信頼をもって。

 そのために、我らの父、主の素晴らしい祈りを唱えましょう。

小さき者と大きな者のために作られた祈りを。

 なぜなら、今日はマリアの月の最後の日、アヴェ・マリアを彼と一緒に唱えて

ください。それは敬虔な母と一緒にいる子供のように、彼が暗唱した優しい

祈りです。それは彼を心地よくさせるでしょう。

 筆が運ぶままに書いて参りました。今夜、私はパリで会議を主催するために

出発します。自分の司教区から離れるのはいささか辛いものがあり、

まるで我らの大切な病人とお別れするような気分です。

 彼のために祈り続けます…。

               アヴィニョン大司教 ミシェル・アンドレ

 (p.s)

ペンテコステ:精霊降臨祭、新約聖書 使徒言行録 2章

ガリラヤ:イスラエル北部の地方、キリストが福音を説いた地。

ペトロ:イエスの弟子。

    使徒言行録に「ペトロの説教」や「ペトロ、足の不自由な男をいやす」

    あり。

ボア=レーモン:ドイツ人医師、生理学者、著書「自然認識の限界について」

                             人間の認識の限界を主張。  

クレド:Credo  使徒信条 

    天地の創造主、

    全能の父である神を信じます。

    父のひとり子、わたしたちの主

    イエス・キリストを信じます。

    主は聖霊によってやどり、

    おとめマリアから生まれ、

    ポンティオ・ピラトのもとで苦しみを受け、

    十字架につけられて死に、葬られ、

    陰府(よみ)に下り、

    三日目に死者のうちから復活し、

    天に昇って、

    全能の父である神の右の座に着き、

    生者(せいしゃ)と死者を裁くために来られます。

    聖霊を信じ、

    聖なる普遍の教会、

    聖徒の交わり、

    罪のゆるし、

    からだの復活、

    永遠のいのちを信じます。アーメン。 

                  (カトリック中央協議会siteより) 

          ピラトはローマ帝国総督、イエスの処刑に関与した。

マリアの月:5月

アヴェ・マリアの祈り:

    アヴェ、マリア、恵に満ちた方、

    主はあなたとともにおられます。

    あなたは女のうちで祝福され、

    ご胎内の御子イエスも祝福されています。

    神の母聖マリア、

    わたしたち罪びとのために、

    今も、死を迎える時も、お祈りください。

    アーメン。

               (カトリック中央協議会siteより)

アヴェは、こんにちわ、おめでとう、と言う意味。

アーメンはヘブライ語で、まことに、たしかに、の意。

祈祷の終わりなどに唱える。 

 

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週刊誌「Le Miroir」1913年8月24号掲載。

90歳時の写真 偉大な昆虫学者  昆虫のウェルギリウスと紹介。

 

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