昆虫学者ファーブル雑記帳

フランスの昆虫学者ファーブルに関する話題を書いていきたいと思ってます。

ファーブルの原稿を求めてーオークション

インターネットがやっと普及してきた頃に、これなら海外の

古書や資料も入手できるのではないかと思い立った。

思い立ったが海外となると少々勇気がいる。

  どうやってやり取りすれば良いのか?

  支払いはどうするのか?

  もし店主から電話なんぞ来てしまったらどうしよう…

  等々。

海外通貨を何度も円に換算してみて支払えるか確認したり、

心配しすぎていては足が出なくなるばかりなのだが、

それでもファーブルの資料への気持ちを抑えられずに

踏み込んでいくこととなった。

 

お店に注文しても返事も来ないということも以前はあったが

総じて日本へのイメージは良いらしい。

真面目で支払に関するトラブルがあまり無いなど、

一般的な好印象があるようだ。

先人達の努力の賜物かと思って感謝している。

 

ファーブルの資料はヨーロッパ、特にフランス中心となるが

稀にアメリカなど他の地域で出現することもある。

最も落ち込むのはオークションに出ていたのに気づくのが

遅れた時である。参加した上で敗れるのは本望だが

出品に気づかなかった時は話にならないので落胆も激しい。

 

次にがっかりするのは公的機関が介入してきた時だ。

良心的な場合はオークションを経てこちらの入札額と同程度で持って行く。

ひどい場合はオークション前に持って行くのだからたまらない。

主催者もお手上げのシステムだから憤っても仕方ないのだが…。

ただしマイナーな地方のオークションには介入してこないので、

パリや大都市開催の出品しか見ていないのだろう。

最近はハンマーを叩く様子がネットでライブ中継されることも

増えずいぶん楽しめるようになった。

 

入札する場合はどうしても不在入札が主になる。

上限額のみ決めておいて入札し競争が激しく金額が上限を超えれば

こちらの負けである。オークションの出品カタログには目安の金額が

書いてあるが全くあてにはならず、開始価格程度と考えていていい。

人気のあるものが出品されればたちまち何倍にもなる。

運良く落札できても計ったように上限額あたりを払わされ、

更に税金、手数料、輸送料が発生し輸出許可が出るのに数ヶ月要する。

日本輸入時の税関手続きで連絡が来ることもあり面倒なことが続く。

 

ファーブルの原稿は年に1回程度は見かけるが、珍しい内容のものは

非常に少なくやはり教科書の原稿であることが多い。

書簡は皆無に等しく昆虫記の原稿などはまず出ないと思っていて良い。

それでも極めて稀に突如出現することもあるので待ち続ける忍耐が要る。

年中目を光らせてサイトをチェックするなど好きでなければ到底出来ない。

 

原稿の価格は以前よりもはるかに高騰した。

パスツールなどに比べ入手しやすかった昔が懐かしい。

原因はフランスにも熱狂的な方がかなり居るということ、

そしてファーブルが再評価されてきているというのが背景にある。

 

オークション参加当初は不安でいっぱいだったが、少し慣れてくると

「かかって来いやー!」「負けないぞー!」みたいな変な心境になった。

それも過ぎると今度は負けても「この価格なら仕方ない」というドライな

気持ちを持てるようになり、更にそんな人が他にも居るんだということに

感心できるようになった。

 

 f:id:casimirfabre:20180722230536j:plain

写真は昆虫記第2巻(1882年刊)

ボルドー大学、ジャン・ペレーズ教授宛サイン

蜂研究で知られるがその後ファーブルとは意見が異なり離れた。