昆虫学者ファーブル雑記帳

フランスの昆虫学者ファーブルに関する話題を書いていきたいと思ってます。

コメントへの返信

前回ブログにコメントを頂戴しました、ありがとうございました。

答えになっているかわかりませんが、わかる範囲で書いておきたいと思います。

資料に乏しく小生の意見も憶測が混じっておりますので、話半分程度にお聞き流し

下されば幸いです。

ただ真偽はともかくとして、いろんな方がファーブルについて考えて下さることに

意義があると小生は常々思っております。

 

ご質問①について

ファーブルの服装につきまして、

確かに残されている写真などでは、いつもあの黒い帽子やジャケットを着ています。

あれでは動作性が悪くまた蜂などの攻撃対象にもなりそうで、とても昆虫の観察や

自然の中に入っていくには不向きに見えます。

地面に寝転がったりするので不審者に間違われないようにあのような服装をしたり、

仰るように金銭的な問題でいつも同じような衣装なのかなぁ…とも思いました。

ただあのファーブルのスタイルは南仏プロヴァンスの伝統的衣装のようです。

式に出席したりするようなもので日常の衣装ではないようです。

写真撮影するときは、きちんとした南仏伝統のフォーマルな衣装で写真を残して

おきたかったのかもしれません。

南仏文芸復興運動、フェリブリージュの一員としてのプライドもファーブルの心には

あったのだと思います。

日常の服装としては今でいうところのジーンズのような青い厚手の生地の衣服を

身に着けていたようです。

小生的には日常の服装で写真に残していて欲しかった気もします。

 

ご質問②について

マダニについて、

小生が野山に虫を捕りに入っていた頃は何もマダニの知識は持っていませんでした。

とにかく蚊に刺されるのが嫌で子供ながらに日本脳炎などの病気を心配してました。

あとは蛇や蜂くらいでしょうか…

知識に乏しいのでやはり目に捉えやすいものばかりを怖れていた気がします。

何十か所も蚊に刺された皮膚の記憶は今も残っております。

 

マダニが媒介する感染症はいくつかあるようですが、いずれも20世紀に入ってから

報告がされています。ただダニ化石は4億年前頃のデボン紀にはあったそうで、

ダニ媒介の病気は人類が知らず診断が出来ていなかっただけなのかもしれません。

ファーブルが生きた時代にフランスの医学的な診断レベルがどの程度だったのか

興味がありますが、マダニが媒介する病気で亡くなった方が当時いたとしても

診断は困難だったはずで、ミルにしても本当に丹毒だったのかわかりません。

ただ頬あたりの皮膚が赤く熱を持って腫れあがって高熱でも出ていれば、

みな丹毒と診断されたのだと思います。

 

ジュールの死因についても解剖記録ももちろんないので想像になります。

オランジュから出ていく際にファーブル家を大家は肺病病みの一家だと揶揄した

ようなので、一般人が見てわかるような症状(例えば咳や痰などの呼吸器症状)

はあったのかもしれません。

体調が徐々に悪くなって転地療法なども試みていますので、マダニ媒介の疾患

で具合が悪くなったというよりも慢性の経過をとって徐々に元気も無くなって

いった印象です。レントゲン検査もまだ無い当時は、慢性の呼吸器症状で体調不良

となれば結核という診断がポピュラーだったのではないかと思います。

 

10年程前に発見されたマダニ媒介ウイルスによる重症熱性血小板減少症候群

もし19世紀のフランスにもありジュールが感染発症していれば、消化器症状と

出血症状が中心でもう少し急性の経過になったのでないかと想像いたします。

ただ他にもマダニ媒介疾患がいくつも存在し、中には慢性経過を取るものもある

ようです。もし当時から疾患が存在し知られていなかっただけだと仮定すれば、

ダニ媒介疾患で体調を崩した方々が実際はいたのかもしれません。

 

微生物についてファーブルがどの程度の認識を持っていたのかわかりません。

光学顕微鏡はもっていましたが、あくまでも肉眼やルーペで見えるレベルを得意に

したのだと思います。

微生物について言及したファーブルの未刊の原稿があります、参考になるかどうか

わかりませんが小生も興味を持っており、活字に直し邦訳が済んだ時点で掲載

したいと考えております。

 

(p.s.)

「ファーブル巡礼」津田正夫著によると、オランジュからファーブルが転居した後、

家を大家が取り壊しました。ファーブルを気に入らなかったことと肺疾患を危険視

したようです。

その大家が言っているのがジュールのことなのか、他の家族のことだったのかは

わかりません。身近な家族内で感染があったとすると他の早逝した子の中にも罹って

いた者がいた可能性はあると思ってます。

個人的な想像になりますが、小生はファーブル先生も罹患していたのではないかと

思っております。ジュール逝去後に肺炎か肋膜炎の診断でファーブルは倒れますが、

一般肺炎ではなくて結核だった可能性があるように思います。

ジュールロスによるストレスから食欲が落ち、免疫力低下による再発増悪だったの

ではないかと。

 

回復後、杖を使用してファーブルは歩いたそうです。

病気によって足腰が弱ったということなのかもしれませんが、結核の後遺症の一つで

痛めてしまったのではと推測しています。

根拠はありません。ただファーブル先生は丈夫な方で、一般肺炎程度で死の淵を

彷徨うような虚弱な体質ではなく、マラリアも乗り越えた人です。

若くして杖を使用するというのも特別な疾患を考えたくなってしまいます。

 

晩年写真に写っているファーブルは常に杖を持っています。フィールドワークのため

に痛めた可能性はありますが、晩年のみ杖を使用していたのでなく、あの肺炎以来

ずっと使用していたのではないかと勝手に考えています。

足の後遺症を引き換えにして何とか病気に打ち勝ち、その反省から食事にも留意し

その後も研究に没頭したのではないかと思っています。

 

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