ラボレムス (Laboremus) というラテン語をファーブルが気に入っていたことは
述べた。(記事:ラボレムス-Laboremus 参照)
古代ローマ皇帝が兵士に与えた合言葉であり、昆虫記第10巻にもファーブルが
自身を叱咤する言葉として記載している。
ファーブルは辛い時、この言葉を口にして前を向き歩んだのである。
前回、パスツールについてブログを書いたので、あらためて資料に目を通していた
のだが…。
ルネ・ヴァレリー・ラドという人は1879年にパスツールの娘と結婚しており、
パスツールの伝記など書いたことで有名である。
この伝記の邦訳が昭和16年桶谷繁雄氏により冨山房から出版されている。
こちらも1000頁を超える労作で、年代ごとにパスツールの人生を紹介していて
非常に詳しい。(「ルヰ・パストゥール」昭和16年 冨山房 参照)
ちょうどファーブルを訪問した頃の年代部分を読んでいたが、ある部分で小生の
目は釘づけになった。
以下、同書から一部引用する(旧かなづかい、誤字は訂正)。
無限なるものに思いを潜め、宇宙の神秘の前に敬虔に頭を垂れ、より高き理想
にと常に思いを馳せている彼は「働こう!」という、偉大なる人をつくる言葉
を繰り返しながら、勇ましく日々の仕事を始めた。
うん?、「働こう!」?…まさかなぁ…でも括弧付いてるし気になる…
以前ならスルーしていたのだろうが、ラボレムスの記事を先日書いていたので
「働こう!」が頭に残っていた小生は気になって仕方がない。
はっきりさせようと思い仏語の原書を取り寄せてみたが、予想通りそこには
Laboremus ! と記載されていた。(「La Vie De Pasteur」1900年参照)
20世紀の歴史学者で使用している方はいらっしゃるが、ファーブルと同世代又は
それ以前でこの「ラボレムス!」という言葉を好んだ方を小生は知らなかった。
しかもパスツールとは…どういうことだろう?
今も混乱している。
可能性について考えたものを以下にいくつか列挙してみる。
小生が無知なだけで実は昔から多くの人が好んで使っていた。
19世紀のラテン語教育ではよく引用されており常識だった。
ラボレムスという言葉が当時流行していた。
パスツールのファーブル訪問時、その言葉が話題になった。
そしてパスツールが気に入って使うようになった。
もしくはファーブルがパスツールから知って気に入った。
そもそも著者のラドが伝記に挿入した例え話で事実ではない。
どれも証拠はないが、お互いから知ったというのは違うだろう。
なぜならそこまで二人の会話は盛り上がってないはずだからである。
古代ローマ皇帝の言葉が元になっているので、ラテン語や歴史に興味ある人なら
当時は常識的な知識だったのかもしれない。
それにしてもパスツールも 「Laboremus!」と口にして頑張っていたとは…
ファーブル先生も知らない事実なら報告したいところだ。
探せば共通点はたくさんあるのに、二人が良好な関係を築けなかったというのは、
ファーブルマニアとしては残念で仕方がない。
年代不詳、1880年代 (60歳代) の頃か。
パスツールは左麻痺で右手を入れているのは流行のポーズ。
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