昆虫学者ファーブル雑記帳

フランスの昆虫学者ファーブルに関する話題を書いていきたいと思ってます。

ファーブルコレクター

昨年末位からオークションがきっかけで、フランス人のファーブルコレクター

というか…ファーブルマニアの方と知り合いになった。

メールでやり取りしている内に、この方がファーブル関連のいろんな資料を

持っていることがわかってきた。

先方も小生がなかなかレアなファーブルコレクターだと認識して頂けたのかも

しれないが、意見交換する中で気に入ってもらえたようだ。

貴重な関連資料のコピーもずいぶん送って頂いた。

日本からでは入手の難しい資料や写真などもあって、天の恵みかと感謝している。

長年探していた書籍も所蔵されていたので、何とかお願いして売って頂いた。

 

入手した資料の中で公表できるものは少しずつ掲載していこうと考えている。

以前は自分だけこっそり所蔵していることに自己満足を感じていたが、

小生も多少は精神的に成長したのか、なるべく公表してファーブル先生や

彼が生きた時代を少しでも感じて頂ける助けになれば良いのでないかと

思うようになった。

 ただ、小生のファーブル絡みの経験話はがっかりな内容の方が多く、

知っていることも全て話せないのが非常に残念なのだが、

差し障りの少ない範囲で今後お伝えして行きたいと思っている。

 

彼の話に戻ると、非常にファーブルについて詳しいので、「ファーブルに関する

本や論文は書かないのか?」と尋ねた。

彼の答えは「ノー」であり、有名になることは望まないとの返事だった。

有名になるためだけに書くのではないと思うのだが、フランス人の考え方なのか、

彼独自の考えなのか…。ファーブル先生同様、何となく彼は頑固そうな印象があった

のでそれ以上聞くことはしなかった。

 

メール交換していてしんどい点は、彼がかなり情熱家のようで一日何通もメールが

届くことだ。時差があるのでこちらは深夜に返信することになる。

おまけに最初の返事を書いている途中にまた新しいメールが届くので追いつかない。

ただし、こちらが質問すると熱心にいろんな情報を教えてくれるのは有り難い。

ファーブルについてマイナーな質問を出来る相手は少ないからだ。

 

彼が所蔵しているのはほとんどコピーだがあまり見かけないものも多い。

植物学者ルキアンとの書簡、アカネに関する原稿資料、何の書簡や原稿なのか

わからないものも多い。ファーブル研究者の学位論文、ファーブルの子孫の方の

書簡まで多々あるが、さて小生が取捨選択、解読し切れるのか甚だ不安である。

 

ファーブルがまだ存命時に交流がかろうじてあったアヴィニョンの学校の校長先生で

マトンという方がいる。書籍はレアでほとんど市場に出ないのだが、ファーブルの

教育面についての研究を特にされていたようだ。こちらも何とか入手できたので

面白い情報があれば掲載しようと思っている。

他にはファーブルの詩をまとめて出版したジュリアンという方にも興味を持っている。

彼もファーブルの晩年に交流があったようだが、他のフェリブリージュのメンバー、

特にミストラルも研究していたようだ(フェリブリージュやミストラルについては

また別の機会に触れたい)。

 

ファーブルの詩の原稿はいくつか所蔵している。ジュリアン編集の詩集では掲載

していないものもあって興味深い。ただ、ファーブルにしては珍しくなぐり書きの

ような草稿もあるのでまだ解読はできていない。

フランスでは小冊子でファーブルの詩集は新しく出版されている。

日本でもぜひ邦訳をやって頂きたいと以前から思っているのだが…。

随分前に奥本先生にお会いした際に、「どなたか訳して下さる方はいらっしゃらない

でしょうか?」とお聞きしたことがあるが、未だ出版はされていないようだ。

 

ジュリアンの出版したファーブル詩集には一部楽譜が付いている。

ファーブルコレクターの彼から音源(新しいものだが)を聴かせて頂いたが、

教会音楽風の厳かな曲調であった。

ファーブルの詩についてはまた改めて述べたいが、ルグロ博士のファーブル伝に

よると、ファーブルはベランジェの詩が好きだったということだ。

パン屋の詩人ルブールの詩なのかと思っていたが、ベランジェは馴染みが無く

意外だった。特に「神さま」や「悪魔の死」など暗唱したそうだが、これらは

動画サイトなどでも聴けるので今は便利な時代である。

「神さま」は聴くとコミカルで楽しそうな曲調だ。Beranger Le bon Dieu などで

検索してみて下さい。 

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ファーブルのプロヴァンス語による詩の原稿「わな」。

1896年フェリブリージュ機関誌「アルマナ」に掲載。

上方に虫ピンで紙を留めているがファーブルの原稿で時々見られる。

標本に使用していたものと同じようなので、最初に見た時は感動したことを

覚えている。