親愛なるレヌッチ
あなたが勇敢な探検家レヴィとともに用意してくれた荷物を受け取った時、
私は前代未聞の高熱にうなされベッドに寝たきりでした。
私はあのツグミの腿肉さえ食べられなかったのです。
ハーブティー以外何も他にとることなくほぼ2週間を過ごしました。
やっと元気に回復し、いま鬼のように貪り食っています。
あなたからのお手紙を受け取った時、私はオランジュにある弟の家で
床に臥せており、なんとも不幸な者のように苦しんでおりました。
弟があなたの手紙を読んでくれたのですが、私の目はあまりの涙で腫れあがり
感情が高ぶっているのを見られないように布団の中に隠れました。
(中略)
……しかし神の御慈悲によって体力が戻れば次の捕獲は素晴らしいものに
なるでしょう。いまコルシカ島の貝についての論文に力を注いでいるのですが、
もうすぐ書き上げます。これをアジャクシオで印刷するつもりです。
またアジャクシオの植物についても研究しています。
これもたぶん印刷すると思います。
それはアジャクシオで私達二人で決めようと考えています。
ええ、アジャクシオです。
なぜなら私はあなたが考えるよりもっと早くそこに戻りたいのです。
病気がぶり返さないと確信が持てればすぐ発とうと思います。
病気の回復が確実にみられればすぐそちらに向かいます。
この病気とまた気苦労のせいで語り方がおかしくなっていますが、
健康と気力はまた戻りますし、親愛なるレヌッチ、私の優秀な生徒たち、
そしてあの海をもう一度見たいのです。
(中略)
ご家族に私どもからのご挨拶をお伝えください。
心の友
J.H. ファーブル